お知らせ

同一労働同一賃金に関する 2026年10月1日からの改正について
労務関係
2026年10月1日から、パート・有期契約社員の方の待遇に関するルール(いわゆる「同一労働同一賃金」に関するルール)の運用が、より具体的に・厳格に求められるようになります。
同一労働同一賃金の基本的な考え方(正社員とパート・有期契約社員との間で、不合理な待遇差を設けてはいけないというルール)そのものが変わるわけではありませんが、次の2点が大きなポイントです。
- 労働条件通知書での「説明を求めることができる旨」の明示が義務化されること
→未明示は10万円以下の過料の対象 - 賞与・退職金・各種手当・休暇などについて「どんな目的のものか」「どのような違い方だと不合理と判断されうるか」といった考え方や具体例が、国のガイドラインで、今より踏み込んで書かれる予定であること
1. 「10月1日以降の労働条件通知書の変更点」
2026年10月1日以降、パート・アルバイト・有期契約社員を
- 新しく雇い入れるとき
- 契約を更新するとき
には、労働条件通知書等の書面で、次の内容を明示することが必要になります。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 相談窓口
に加えて、
「正社員との待遇の違いの内容や、その理由について、会社に説明を求めることができる」という趣旨の文言の明示
このため、10月1日以降に締結・契約更新するパート・有期契約社員については「新しい内容を反映した労働条件通知書等」を使用していただく必要があります。
なお、例えば、「2025年12月2日から2026年12月1日まで」のように、すでに結んでいる契約については、2026年10月1日の時点で、改めて労働条件通知書を作り直す義務はありません。
ただし、その契約を2026年12月2日以降も更新する場合には、その更新時点から新しい様式での明示が必要になります。
2. 「なぜ待遇が違うのか」を説明する義務について
パートや有期契約社員の方などから、
「なぜ、私は賞与がないのですか?」
「なぜ、私の賞与は正社員よりも少ないのですか?」
「なぜ、正社員だけ〇〇手当があるのですか?」
と質問を受けた場合には、会社として、正社員との待遇の違いについて、その内容や理由を説明する義務があります。
説明があいまいなままですと、従業員との信頼関係が損なわれたり、紛争や争訟のきっかけになりやすくなりますので、あらかじめ会社としての考え方を整理しておくことが重要です。
3. 「全て同じ待遇」にしなければならないわけではありません
よくあるご質問として、
「全ての従業員を、同じ待遇・同じ金額にそろえなければいけないのか?」
というものがあります。
例えば、
- 正社員:賞与あり
- パート:賞与なし
という違いがある場合でも、それだけで直ちに違法になるわけではありません。また、常に同じ金額・同じ水準にそろえなければならないということでもありません。
重要なのは、
- 仕事の内容
- 責任の程度
- 配置転換や転勤の有無・範囲
- その手当や休暇の「目的」
といった点から見て、なぜ待遇に違いがあるのかを、合理的に説明できるかどうかです。
一方で、同じような仕事内容・責任・配置転換の有無で働いていて、
「パートだから」「有期契約だから」
という理由だけで一律に賞与や手当を支給しない、休暇を付与しない、という運用は、不合理と判断される可能性が高まります。
4. 「賞与・退職手当についての考え方」
賞与や退職手当には、一般的に、
- 会社の業績への貢献に報いる
- 労務の対価を後払いで支給する
- 長期勤務や功労に報いる
- 従業員の生活を支える
- モチベーションを高める
といった目的があります。
このような目的が、パート・有期契約社員の方にも当てはまる場合には、その方の仕事の内容や責任、勤務時間、勤続年数などに応じて、正社員とのバランスが取れた形で支給することが求められます。
「パートだから」という理由だけで一律に賞与・退職手当を支給しない、という説明では不十分であり、
「どのような職務や責任を負う人に」「どのような趣旨で」賞与や退職手当を支給しているのか、正社員とパート・有期契約社員の双方について整理しておく必要があります。
5. 「家族手当・住宅手当」についての考え方
(1)家族手当
例えば、
- 正社員には扶養家族がいる場合に家族手当を月2万円支給している
- パート・有期契約社員には家族手当を支給していない
という運用をしている場合、
「家族手当の目的」が「扶養家族のいる従業員の生活を支える」ことであれば、同じように扶養家族を持ち、継続して勤務しているパート・有期契約社員を、一律に対象外としてよいのかが問題になります。
2026年10月1日以降のガイドラインでは、
- 契約更新を繰り返していて、相応に継続勤務が見込まれるパート・有期契約社員の方については、正社員と同様に家族手当を支給すべき
という考え方が明確に示されますので、この点を踏まえ、家族手当の目的と支給対象の整理を行うことが重要です。
(2)住宅手当
住宅手当については、目的によって取扱いが変わります。
- 「転勤に伴う負担を補うため」の住宅手当であり、転勤のある正社員のみに支給している場合には、転勤のないパート・有期契約社員の方に支給しないことには、合理的な理由があると考えられます。
一方で、
- 生活補助として、勤務地や転勤の有無に関係なく、正社員に一律で支給している住宅手当の場合には、同様に生活費の負担を抱えるパート・有期契約社員の方を一律に対象外とすることは、不合理と判断される可能性があります。
6. 「休暇・福利厚生」についての考え方
同一労働同一賃金の対象となるのは、賃金だけではありません。次のような休暇や福利厚生も含まれます。
- 夏季休暇・冬季休暇
- 病気休暇・病気休職中の給与保障
- 表彰制度・褒賞
- 表彰制度・褒賞
例えば、
- 正社員には夏季休暇があるが、同じ時期に継続的に働いているパート・有期契約社員には夏季休暇がない
という場合、その違いに合理的な理由があるかどうかが問われます。
単に、
「正社員とパート・有期契約社員は制度が違います」
「正社員の方が責任が重いからです」
といった説明だけでは足りず、
「どのような仕事や責任の違いがあるのか」
「その違いと、夏季休暇や病気休暇の付与にどのような関係があるのか」
を具体的に説明できるようにしておく必要があります。
7. 「会社として今から準備しておくべきこと」
今回の改正を踏まえ、次のステップで、自社の制度を一度点検していただくことをおすすめします。
- 正社員と、パート・有期契約社員の待遇を洗い出す
(基本給、賞与、退職手当、各種手当、休暇、福利厚生 等) - 正社員とパート・有期契約社員の間で「違いがある項目」を確認し、それぞれについて、
- その待遇の目的(何のための手当・休暇・制度なのか)
- 仕事の内容、責任の程度、配置転換や転勤の有無・範囲
- 勤務時間や勤続年数
- 特に今回、国のガイドラインで内容が具体的に示された
- 賞与
- 退職手当
- 無事故手当
- 家族手当
- 住宅手当
- 夏季・冬季休暇
- 病気休職・病気休暇
- 表彰・褒賞 など
待遇差を見直す際には、原則として、正社員の待遇を引き下げて差をなくすのではなく、パート・有期契約社員の待遇を改善する方向で検討することが望ましいとされています。
8. まとめ
- 2026年10月1日以降、パート・アルバイト・有期契約社員を雇い入れる・契約更新する際には、「正社員との待遇差について説明を求めることができる旨」を含めた新しい労働条件通知書等を使用する必要があります。
- 同一労働同一賃金の基本ルールは変わりませんが、賞与・退職手当・各種手当・休暇・福利厚生について、「どのような場合に不合理な差となるか」がより具体的に示されます。
- ポイントは、「全ての待遇を同じにする」ことではなく、「待遇ごとの目的」と「仕事内容・責任・配置転換・勤続などの実態」との関係で、合理的な理由のない差をなくし、説明できる状態にしておくことです。
自社の制度がこの考え方に沿っているか、一度チェックしてみてください。
また、
「合理的な理由をどのように考えたらよいのか分からない」
「自社の制度に問題がないか確認したい」
という会社様は、ぜひお気軽にご相談ください。
当事務所では、同一労働同一賃金に関するご相談を無料で承っております。
社会保険労務士事務所 人材革新 淺井 烈
